歯周病治療
本当は怖い歯周病
歯と歯ぐきのあいだにある歯肉溝と呼ばれる溝にプラーク(汚れ)が溜まるとそこに細菌が住みつき、やがて炎症を引き起こすようになります。この炎症の起こった状態が歯周病(歯槽膿漏)です。歯周病はむし歯と違って自覚症状が出るまで時間がかかるため自分では初期のうちに気付くことが難しく、自覚症状が出るまで放置していると重大な事態を引き起こす、実は怖い病気なのです。
初期状態としては歯ぐきの腫れや変色が起こります。この段階では痛みはなく、自身で気付ける変化としては外見上だけですので見落としてしまうことがほとんどです。そこから進行が進むとわずかな刺激で歯ぐきから血が出るようになり、さらに悪化すると歯ぐきが溶けるように痩せ衰えていきます。
歯ぐきが痩せ続けるとある時点を境にその上に乗る歯を支えきれなくなり、歯がぐらつき始めるようになります。そこまで症状が進むと異常に気付かざるを得ないので多くの方が歯科医院にかかりますが、すでに抜歯以外を選びようがないという診断を受けることがあります。しかも歯を抜くだけでは留まらず、炎症が身体のさらに奥深くまで進行して顎の骨や全身にも深刻なダメージを与える可能性がある怖い病気、それが歯周病なのです。
歯周病の症状を確認する
大半の歯周病は歯肉溝に溜まるプラークがきっかけで発症します。そしてその症状が進行することでその溝(歯周ポケット)は徐々に広がっていきます。そのことから歯周病の進行度合いは溝の深さから判断することができるのです。進行度合いは「軽度」「中程度」「重度」の三段階に分類されます。
軽度
歯周ポケットは3ミリ以下。この状態は「歯肉炎」と呼ばれており、周囲の顎の骨への影響は見られません。歯ぐきが時々むず痒くなったり、ブラッシングによる出血が起こりやすくなったりします。
中程度
歯周ポケットは3ミリ以上6ミリ以下に広がっていて、この状態になると「歯周炎」と呼ばれるようになります。骨を溶かし始めるため歯ぐきが徐々に下がり、露出した歯根に冷たいものが触れるとしみるようになります。進行のスピードはここから増していきます。また露出した歯根部分は元々骨の中に埋まっている部分で外に出るように出来ていないのでむし歯に対して抵抗力が低いので注意が必要です。
重度
歯周ポケットが6ミリ以上に広がっており、歯がぐらつき始めるので自分で異常に気付く方がほとんどです。歯がぐらつくと会話や食事に支障を来たすようになりますし、膿が溜まることで口臭の原因となることもあります。日常生活に不便を感じるようになるため一日でも早い治療が必要です。
歯周病の症状ごとの治療法
軽度
「歯肉炎」といわれる状態。この段階ならば日々のブラッシングの徹底により元の健康な状態に戻すことができます。ただ付着した歯石は歯ブラシでは取りきれないため、歯科医院でクリーニングしてもらいましょう。
中程度
深さを増した歯周ポケットの中に溜まった歯垢や歯石は家庭におけるブラッシングで完全に取り除くことはできません。歯科医院による専門の器具を用いたクリーニングで取り除きましょう。
重度
歯周ポケットは広がりきり、深さもかなり増しているため歯科医院による歯石除去でも完全に取り除くことはできません。外科的な手術で歯ぐきを切り開き、歯石を除去することもあります。歯のぐらつきがあまりにひどいようであれば抜歯となります。
歯周病に関して注意すべきこと
歯周病は自覚症状に乏しく、気づいたときにはすでに歯ぐきがかなり溶けてしまい、抜歯するしかない状況に陥ることが多く見受けられます。しかも抜歯した部分を放置しておくとその空白に隣接する歯が徐々に倒れ込むようになり、歯並びが悪くなったり二次むし歯を引き起こしたりと周囲の歯の健康も損なってしまうことがあるのです。そのため歯周病で歯を失ったなら早急に義歯(入れ歯)やインプラントなどの対処をしなければなりません。
しかしそれらの治療はときに大掛かりな治療を必要とすることがありますし、さらなる処置によって他の歯の寿命を縮めてしまうかもしれません。そういった事態を招かないためにも歯科医院を定期的に訪れることで歯はもちろん歯ぐきの健康状態を常にチェックし、異常があれば早い段階で治療をするようにしましょう。
のがわ歯科では歯周病検査に力を入れています
歯周病は痛みを伴わないためご自身で早期に気づくことが難しく、気がついたときには症状がかなり重くなっていることの多い病気です。そのため当院でご提供する歯周病治療においては検査を重要視し、現在がどのような状態であるかを正確に測定することを心がけています。
検査の項目としては歯ぐき・歯肉の変色や腫れ具合の確認、専用器具を用いた歯周ポケットの広さ・深さを計測します。また歯ぐきからの出血は歯周病における見逃せないサインであるため出血度合いの確認も行います。
通常のブラッシングや少し触れた程度で歯ぐきから血が出るようであれば初期の歯周病を疑うことができます。本格的な歯周病治療を始める前にそのような検査を念入りに行うことで歯ぐきの状態を正確に把握します。
またこのように歯周病を引き起こす原因やブラッシングや歯石除去といった対処法を患者さんに共有することで、患者さんも日常生活の中で目的意識を持ったセルフケアに取り組めるようになります。例えば日々のブラッシングもそれを漫然と行うのではなく、こうすることでむし歯や歯周病を予防することができる、という意識を持つことができればそれだけ効果も上がるのではないでしょうか。歯科医院における医師や歯科衛生士の治療・処置だけでは歯科治療は完結しません。患者さんご自身が意識的に行うセルフケアが何より重要なのです。
歯周病治療のよくあるご質問
- 自宅での歯周病の治し方はありますか?歯磨き粉で治りますか?
- 歯周病の治療、予防においては毎日のご自宅での歯磨きが一番重要です。ですが歯周病の原因となる歯石は歯の表面に硬くくっついており、歯ブラシではとれません。定期的な歯科医院でのケアと毎日のご自宅でのケアの両輪で歯周病の対策をしていく必要があります。
歯磨き粉には様々な成分が含まれていますが、基本的には歯周病等によってでるお口の中の症状にを抑える成分等が含まれており、歯磨き粉で歯周病自体をなくす、治すということは難しいです。
- 歯周病が他人に移るって本当ですか?
- 歯周病はお口の中の歯周病菌による細菌の感染症です。ですが歯周病菌の感染力自体は決して強くないので風邪やインフルエンザのように他人に移るということはありません。
元々歯周病菌は口腔常在菌といって全員のお口の中にいる菌の1種ですので感染、という点ではあまり神経質になる必要はないと思います。ただ、口腔常在菌のいない赤ちゃんに対しては注意しておく必要があります。それでも空気感染ではなく、食事の際に同じ箸で食べさせない、等の対応が必要です。
- 歯周病はどれくらいで治るか教えてください。
- 患者さん一人一人の症状等によって治療期間は異なります。歯周病は生活習慣病なので治療がおわれば完治、というものではありません。治療が終わった後もご自宅での充分なケアと定期的に歯科医院を受診して状態のチェックとケアを受けてよい状態をキープしていく必要があります。
- 電動歯ブラシの利用は歯周病予防に効果がありますか?
- 電動歯ブラシと普通の歯ブラシで歯周病予防には大きな違いはありません。どちらもブラシの毛先を隅々までしっかりと当てることが重要です。ただ、電動ブラシは歯に当てるだけでブラシを細かく動かすことはやってくれるので高齢の方など小刻みに歯ブラシを動かすのが難しい方には電動歯ブラシの方がお掃除しやすいと思います。
- まったく痛みも症状も無いのですが、歯周病と診断されました。治療しないといけませんか?
- 歯周病はその進行の初期から中期までは自覚症状が出ないことがほとんどです。痛みや噛みにくいなどの症状が出るころには歯周病の中期から末期になるくらいまで進行してしまっていることが多く、進行した歯周病は元の健康な状態まで戻らないことがほとんどです。歯周病の治療は自分で症状が出ない初期のうちからケアをしておくことがとても重要ですので、早めにご相談されることをお勧めします。
- 歯周病の治療は保険が適用されますか?
- 通常の歯周病の治療は保険が適用されます。
- 口臭がひどいのですが、歯周病ですか?
- 歯周病だけが口臭の原因ではありませんが、口臭の主な原因の一つです。歯科医院で歯石などの汚れをしっかりと取って、その後お掃除を続けていただくと歯ぐきが引き締まってきます。そうすることで多くの口臭は改善を期待できます。また、舌の表面の汚れも口臭の原因となることがあるので、舌のお手入れについてもご説明いたしますのでご相談ください。